新型コロナウイルスワクチンとドーピング
- 花井 達広
- 2021年6月14日
- 読了時間: 3分
こんにちは、花井です。
最近は、新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場でワクチン調製をしていたりもします。薬剤師として果たすべき社会的役割にはちゃんと協力するタイプの人間です。
というわけで、日本でもワクチン接種が進んでいるところなので、新型コロナウイルスワクチンとドーピングの関係について書いてみようと思います。
新型コロナウイルス関連については、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)がQ&Aを出しており、ワクチンについても言及されています。下記リンクにWADAのQ&Aを基にした日本アンチ・ドーピング機構のQ&A集を載せておきます。(2021年3月15日時点)
この中で、『11.新型コロナウイルスのワクチンを接種すべきでしょうか?または(接種したことにより)ドーピング検査 で陽性反応となる可能性はありますか?』という質問に対して、『(前略)新型コロナウイルスのワクチンが、禁止表国際基準に記載されている禁止物質、禁止方法を含んでいること、およびアンチ・ドーピングにおける検体分析に影響をもたらすことは報告されていない。WADAは引き続き状況を注視し、見解に変更が生じた際は、広く情報発信する予定でいる。』 と述べられています。ざっくり言うと、今のところ新型コロナウイルスワクチンは禁止物質じゃないよ、ということになります。
まぁ、これだけで充分なのですが、もう少し掘り下げてみます。
新型コロナウイルスワクチンのうち、ファイザー社とモデルナ社のものはmRNAを有効成分として使っています。mRNAは、体内でタンパク質を作るための設計図になる遺伝情報を持っているものです。新型コロナウイルスワクチンの場合は、ウイルスの弱点(抗原)になる部分のmRNAをワクチンとして打ち、体内に作られた抗原に対する武器(抗体)を事前に作って感染に備える感じになります。
という感じで、ワクチンの成分としてmRNAという遺伝情報を体内に入れるわけです。ここまでの話の流れで、もしかしたら、
これって、遺伝子ドーピングじゃないの??
って思った方もいるかもしれません。(いないかもしれません)
遺伝子ドーピングについて紹介すると、禁止表国際基準には”M3.遺伝子および細胞ドーピング”の中に『何らかの作用機序によってゲノム配列および/又は遺伝子発現を変更する可能性がある核酸又は核酸類似物質の使用。』を禁止する旨が記載されています。難しい表現が並んでいますが、「核酸」=DNAやRNAによって体内の遺伝子を変えることを遺伝子ドーピングと呼んでいます。
新型コロナウイルスワクチンの場合、注入されたmRNAによって体内のDNAや他のRNAが書き換えられることはありません。抗原を作るための設計図が自分の中に無いので、外注して受け取っただけなのです。
もちろん、抗体ができることが競技力向上になるわけではないので、新型コロナウイルスワクチンはドーピングには当たらない、となるわけです。
というわけで、アスリートの方はワクチン接種にドーピングの心配をする必要は(今のところ)無いですし、一般の方に言いたいのはmRNAワクチンで遺伝子操作なんかされない!!ということです。
このようなピンポイントなテーマでも、講習会・研修会を承っております。よろしくお願いいたします。
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